現代の食医 食べて飲んで生きる毎日

長野県で料理人/医者をしています。フィレンツェで料理人してました。

流浪の民スペインを縦断中

Buonasera!

いやスペインにいるのでBuenas noches!

この1週間でイタリアにはいろんなことがあり過ぎましたね、くわっちです。

pandemic宣言も出て世界全体が真っ暗闇へという雰囲気ただよってます。

なんでお前スペイン!?ってなってる方のために色々書いてみます。

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(イタリアを共に脱出したバナナ)

 

3月9日の昼営業。

イタリア人シェフから

「今日夜レストラン締めるかもしれない」

と言われつつ昼営業は普通にやりました。

そんで夜について特に言及がなかったため、

夜はいつもどおり17時に仕込みへ。

客少ないこともあってその日が初めての「前菜・ドルチェを1人でやれる日」となっておりドキドキワクワク。

仕込み中にオーナーが来て

「明日から最低10日間は店閉めるわ」

とのこと。

おおっと、コロナいよいよだな。

ひとまず今日があってよかった、経験できる。

と思いながら仕込みを終え、賄いを食べ始めようとしたところに

「やっぱ今日も閉めるわ」

とのこと。

おおおおっっとぉ。

そんなパターンもあるのかぁ。

で急遽、店を閉めるための簡単な片付けをして解散となりました。

周りの話を聞いて考察する限りですが

「飲食店が営業する場合は席と席の間に1m以上の距離を開けなければいけない」

という決まりが今回できており、

それでは採算が取れず閉めたほうがいいとの判断だと解釈しています。

 

その後、他のインターン仲間に呼ばれていつものBirreria(ビアバー)へ。

彼らも営業のために店に行ったら

「今日から閉めるわ」

って言われちゃったそうで。

Birreriaへの道中も閉めてる店がいっぱいでした。

明日からどうするかねえなんて話をしながら、

いつも人でいっぱいの店に僕ら1組しかいない異様な状況で飲んでおりました。

 

僕はというと10日間は自由な時間を確保できたわけだと考えて、

すぐさまスペイン行きを考え始めました。

せっかくできた休日なんだもの。

飛行機を探しながら酒をちびちび。

そしてもう1人仲間が合流したところで、

あのニュースを見ることになります。

 

「イタリアの首相が10日の午前10時から、

これまでミラノがあるロンバルディア州など特に危険と考えられる地域に適応していた条例をイタリア全土に適応すると決定した。」

 

え?あともう約12時間後にフィレンツェ封鎖?

ミラノにいるイタリア人シェフの知り合いに連絡を取っていたこともあり、

その大変さやパニック感を十分感じていた僕。

瞬間、直観が語りかけてきた。

 

「すぐ出国しろ。スペインかギリシャへ。」

(※スペインかギリシャなのはシェンゲン協定国内で「地中海式料理」を体験できる国であるため。留学の目的です。)

 

親のOKやその他関係各所への確認は取れていない。

でもこのまま返事を待っていたら閉じ込められて手遅れになる(直観)。

飛行機の値段も上がるはず(直観)。

店がほぼやっていないフィレンツェで、

しかも自炊しづらいこの家に大家とずっといるとかQOLが落ちる(直観)。

 

まず格安のスペイン行きチケット、

出発朝8時(条例発令前)を押さえました。

(ギリシャにしなかったのは情勢が悪化しつつあることと日本へのアクセスがスペインに劣ることから。)

この時点で日付は変わり条例発令まで残り10時間。

気分はまさにドラマの「24」。

 

チケットは手にした。

ここからはリスクヘッジをしなければならない。

その時点での心配事はたくさん。

・なぜか手元のクレジットカードがまた使えない。海外出て生きていけるのか。

・両親にNoと言われれば今の僕の立場としては出国したくてもできない。

奨学金をもらっている身で、この動きを取ることが正しいかどうか分からない。後から失格ではシャレにならない。

・手元に現金なくてカードも動かないから4月までイタリアに帰ってこれなかった場合に備えて4月分の家賃を置いていく、ということが不可能。残していく荷物を大家に捨てられたらどうしよう。

 

チケットがあるからって出国できるわけではないのだ。

ボタンがあるからって押しちゃいけない。

「うわあ、どうしよう勢いでチケット取っちゃったけど飛行機までの8時間でこの問題全部解決できるのか(焦り)」

って正直なってました。

ただその前日にお世話になっている方と電話をした際にたくさんのインスピレーションをいただいていたため、

「自分がしたいことは出国することだ」

と腹は座っていました。

さらにありがたいことにすぐさまその方とメッセージのやり取りをすることができ、

波立つ心を整理することができました。

 

よし、本当に腹は座った。

 

そこからは一つ一つのリスクを解決していくことに専念しました。

イタリアにいる他のトビタテ生と連絡をとっていたため、

このケースにおける他大学およびトビタテ事務局の対応について調査。

パターンを掴み予想を立てつつ、

大学側に連絡・相談のメッセージをしました。

次に親に電話をしたい旨を伝えました。

クレジットカードについては前回スキミング被害に遭ったときの迅速なカード会社の対応が頭にあったためきっとなんとかなると自己解決。

家賃の問題については前日にミモザの花を渡したことで大家が少し自分に甘くなってると信じ込み、

きちんと伝えれば4月過ぎて帰ってきてから払っても大丈夫だろうと自己解決。

(ミモザが僕の精神安定剤になった!渡してよかった!)

 

まず母親と連絡がついた。

自分の中の筋書きをきちんと伝えたところ穴を指摘されつつも納得してくれた。

よし、次は父親だ。

 

その前に大学側から返信が来て出国自体をトビタテ事務局も容認するとのこと。

よし、いいぞ。

波が来てる。

 

父親からの連絡を待ちつつ、

スペインに出国した後に国境が閉鎖および飛行機が全て欠航になることを予想しイタリアに帰国できない事態を想定、

日本帰国も可能で旅を続けることも可能な用意をリュック一つに詰めていく。

 

父親とは飛行機まで残り4時間となった午前4時ごろに連絡がついた。

こちらも真剣に自分の読みと考えを伝えたところ納得してくれた。

やった!これですべてのリスクを押さえた!

 

達成感でいっぱいになるとともに、

これからイタリアを脱出すること、

スペインで旅を始めることのワクワクが込み上げてきました。

 

「きっとこの判断は間違っていない」

 

その確信とともに朝4時から5時半まで先の見えない旅に向けて就寝。

このベッドももしかしたら最後かなあ、なんて。

 

起床し荷物をもっていざ飛行場へ。

まだ条例は発令されていないため何もかもがいつもどおり。

パスポートを見られることもなく、

いつものようにシェンゲン協定国への「国内旅行」感覚の旅立ちとなりました。

心の中では特大のガッツポーズ。やった!

 

そんなこんなで、こうしてスペインにおります。

すでに長くなったので細かいスペイン旅の感想は次回にしておきますが、

その日暮らしの旅程は

北部のBilbao(ビルバオ)→地中海沿岸のGranada(グラナダ)→さらに地中海沿岸のMálaga(マラガ)

マラガからは日本帰国のためにバルセロナ空港へ移動します。

 

さて、イタリアもスペインも日本で報道されている通りコロナウイルスが拡大しております。

イタリアの現状は

・県をまたいで移動ができない(仕事や家族の急用、健康上の都合などがあり証明できる場合のみ可)。

なお嘘をついて移動した/しようとしたことがバレた場合、罰金もしくは逮捕されることも。

・薬局とドラッグストアとスーパーマーケット以外の店舗は閉店。

・上記の店舗を訪れる以外の理由で外出することは禁止。場合によっては罰金の対象に。

・学校期間もすべて閉鎖。

・この条例は4月3日まで継続。

・13日付で全土の約半分の空港が閉鎖されることに(フィレンツェ空港を含む)。

・イタリア全土が日本の外務省が示す感染危険レベル2以上に(場所によってレベル3およびレベル4)。

コロナウイルスによる死者数は中国に次いで1000人を超えたようですね。

 

スペインについては

マドリードのある州は学校閉鎖。

・スペイン全土が日本の外務省が示す感染危険レベル1以上に(場所によってレベル2)。

・13日朝のニュースで街を超える移動に理由の確認を求められてるような場面が。

・感染者数が12日時点で2500人を超えている。

 

イタリアはもう十分に大変ですが、

今いるスペインも時間の問題でしょう。

なおトビタテはレベル2以上の地域にいる学生を支援しないと決めているため、

僕の留学は現在「中断」となっています。

 

このまま15日の日本帰国便まで移動の制限がかからないことを祈るばかりです。

僕の旅は安全かつ意味のあるものとなるよう継続中です。

そろそろマラガに着きます。

地中海沿岸地域の様々な宗教、民族に影響を受けMixされた文化は日本にはないもの。

そして地中海食。

家に閉じ込められることを避け、

リスクを抱えつつも外へ出たこの判断を、

ずっとずっと価値あるものにするために、

もう少々旅を続けようと思います。

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(青いトマトは青いトマトで楽しみ方があった)

 

無事帰国の算段がついたあたりでまた更新しようかな。

Buona serata, Buena noche.