現代の食医 食べて飲んで生きる毎日

長野県で料理人/医者をしています。フィレンツェで料理人してました。

留学生活にだって黒いリアル

Buonasera.

客がコロナウイルスのおかげですっかり減った1週間を経て(ほぼ働いてない)、

休みの日曜日をランニング、打ち合わせ、ワインのお勉強と建設的に過ごせたと思っていたくわっちです。

でも、ずっと違和感があって心がモヤモヤとしておりました。

 

留学生活の負の側面にだって焦点を当てたいと思います。

僕が「留学に憧れている人」だった頃、

キラキラ留学ライフを切り取るSNSを目にしては、

その表面をむしり取ってむき出しにしたいと願っていました。

今から書くことは少なくともここ1週間〜2週間で起きたり考えたこと4つです。

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揚げたランプレドット団子(手前)に揚げたトリッパ(奥)。Firenzeっぽい。

①働くよそ者の立場はいつも弱い

Firenzeに来て6ヶ月が経ちました。

レストランのインターンは4ヶ月目に入っています。

インターン生にはお金が払われないことについて、再度モヤモヤとしております。

それでもまあ働くわけです。

お店としてもありがたい。

経験できて僕もありがたい。

放っとけば終わりまで続く毎日。

じゃあ、この状況を変えたいと思うのは誰か。

店側ではなく僕側でしょう。

できることは増えたけど、それについてフィードバックが得られない。

「ありがとうの言葉」なのか「お金」なのか「モノ」なのか「対応」なのか、

何か目に見えたり手に取れる形で示されればきっと満足できる。

しかしそれが無いならば自分から動かねば。

 

お休みを請求しました。

 

お金ももらってないしそんなに引け目感じないから、と思って。

でもね。

めっちゃ言いづらかった。

めっちゃくちゃ言いづらかった。

だって

「休みください」

って言ってさ。

「ダメ、もっと働いて」

って言われちゃったら僕は本当にモチベーションを失う。

僕の立場は「インターン生として置いてもらっている人」なので、

「休み欲しいならよそ行って」

って言われる可能性すらある。

その結果にはならないかもだけど、動かなければ起きる可能性すら0。

動くということはリスクを取らなければいけない。

ここで本当にモチベーションを失ってしまったら、

店を変えたくなるかもしれない。

しかし、そう簡単に店が見つかるわけでもない。

変わった店は今よりもっと良いかもしれないし、悪くなってしまうかもしれない。

さらにイタリアは自国じゃ無い。

言葉は100%使いこなせないしルールもよく分からないから、

良いように使われて終わるかもしれない。

今だってそうかもしれない。

でも真実は言語力もなくウソも見分けられず分からない。

 

 

僕はイタリアの人からすれば「外国人」。

ルールをちょっとすり替えて思いどおりに動かされてても気づかない可能性が高い。

立場の弱い「外国人」は悪い人(経済にとっては良い人?)にとって都合がいい。

 

これ、世界規模で僕らが加害者やってることでもあるって分かります?

ゾッとするわ。

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「春に見る桃色」は、日本人の心と切り離せないみたい。

 

スキミング被害に合いました

クレジットカードの番号を取られて口座からお金を抜かれてしまうあれです。

朝起きたら謎の引き出し通知メール。

3秒くらいして

 

「あ、やられた」

 

って気づきました。

いつものATMしか使ってないのになぜ、どこで。

そんなことはもう誰にも分からないし考えたって仕方ない。

そして得も言われぬ不安との戦いへ。

現金を引き出せる他のカードがない(アホか自分、2枚以上は海外の基本や)。

手元に現金は1万円ちょっと。

いつカードが手元に届くか分からない。

石川県のド田舎バンクは海外慣れしてなくて対応が遅い。

取られたお金は戻ってくるのか。

日本のカード会社、銀行に電話するにも通話代はかかってしまう。

このままだと次回の携帯の支払いができないかもしれない。

連絡手段を失ってしまうかもしれない。

かもしれないに頭を支配されてしまった。

 

海外で現金を失う恐怖。

恐ろしいですよ、留学します?(ぜひカードを2枚以上もって留学、しましょうね!)

今は解決しましたよ、カード会社ありがとう。

 

③家賃が急に上げられた

今月から家賃を上げられました。

本当は法律上できないことらしいんだけど、

だから裁判しますかなんて、

あともう2~3ヶ月しか滞在しない国でまさか。

交渉と泣き寝入りしかない。

交渉できるほどのイタリア語は持ち合わせちゃいないし、

向こうはヒステリックばあちゃん。

いきなり家を追い出されてしまったら次の当てはない。

だから言い分は伝えてあとは飲み込むしか無い。

こっちが99飲み込む感じ。

1は相手が僕の言い分を聞いたってだけ。

 

「出て行きたければ出て行けば」

なんて言うから家を探してみる。

でも別のレストランを探すのと同じ。

動くことのリスクもあるし、

そもそも希望に合う物件がないとか、

自分が相手の条件に合う状況にないとか。

家を失って海外でホームレス。

その怖さ、知ってみたい?

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青空に映える桃色に心が動いた16kmランニングの途中

 

④言語の不自由さが生活の不自由さ

イタリア語のレベルが初めの頃に比べて上がっているのは間違いない。

前はまったく分からないから聞き逃していた会話が耳に入るようになってきた。

耳に入って分からなかったりすると文脈から推測を試みるようになった。

そしたらストレス。

なんか自分のこと言ってる気がするときとかある。

でも聞き取れてないから定かじゃ無い。

で確認するのもなんか違うし。

実際そうだったとして言い返せるWordも持ち合わせていない。

これもまたグッと泣き寝入り。

これが全部分かればなって、プライドのすすり泣きが聞こえる。

やっぱり外国人の立場は弱い。

本当に何か言われてるかどうかも分からない。

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ニョッキの料理ってめっちゃむずいんだと思う

4つ書き倒しました。

留学したくなりました?

これが僕の留学のリアル黒い部分です。

暗い感じで書くとこうなります

 

でも、これ全部が海外だからこそできる経験。

この経験をしに留学に行くんだと思うんですよ。

黒い部分をいっぱい見る。

日本で日本をどんなに知り尽くそうと、

この世界のリアルは実感できない。

 

今書いたことだって書き方を変えれば

①お休みを4日間いただいたので旅行に行ってきます!

スキミングされて学んだのはSkype通話を通せば安く国際電話できること。しかもカードは被害から3日で手元に来ました!カード会社ありがとう!

③家賃を上げられたけどこんな理不尽だってイタリアっぽいじゃない。

④言語で悔しい思いをしたから、もっと言語ががんばれる。

とか?

これだって確かにリアル。

なんか前向きでキラキラした留学生活に見えるじゃん。

でも元書いたものだってリアル。

心の捉え方と整い方次第で魅せ方は変えられる。

でもほとんどみんな苦しみながら整理つけて生活している。

自分の心の黒い部分が見えて、それにすらイヤになって、

でも心をまた落ち着けようと努力して、

状況を好転させようと頭を働かせて、

より良い留学生活にする。

これが留学のリアル。

 

③の家賃の件。

大家は気分が変わりやすいおばあちゃんで、

ピーピー言われて正直しんどい。うるさい。

でも部屋も立地もいいから変える気は無い。

3月8日はイタリアの"Festa della donna"(女性の日)

世界女性デーでもある。

この日はイタリアではミモザの花を男性が女性に送る。

じゃあこの文化、ピーピー大家に試してみようって思って、

家賃上げられたし日曜の朝からピーピー言われて腹立つけど、

イタリアの文化を体験するためだと思って花屋で買って渡すことにした。

「いつも思うように動いてくれない日本人」から花渡されたら、

いったいどんな顔するだろうって。

そんで仮に喜んだりして僕への対応がちょっとでも変わったら〜なんて。

 

 

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ミモザの花束が救ってくれたのは…

 

なんてこった。

渡された大家、ふつうに喜んだ。笑

これで僕への対応が何か変わればな、とか想ってる自分は今でもいる。

でもそんなことより何より重要だったこと。

 

この花束のおかげで僕の心が救われた。

 

不満、不満、不満。

この1~2週間で襲ってきたいろんな負の思いがすこしほどけた。

不満で汚れてマイナスなことばかり考えていた心が洗われた。

 

裏切られても信じることから

奪われても与えることから

寂しくても分け合うことから

悲しくても微笑むことから

 

教えに従いたくってなんて、高尚な理由じゃ無い。

純粋な下心とおふざけから半分冗談でも感謝の形として花束を渡すという行為、

奪われて(値上げ分)も与えるという行動が、

僕の心を軽くしてくれた。

やっぱり事態を、今を変えられるのは自分自身だった。

 

この留学生活で僕の心はたくさん傷つけられるけど、

その度に心を磨くチャンスがくる。

チャンスを正のエネルギーに変えるか負のエネルギーに変えるかは自分次第。

あの1つの選択が大きな違いになって返ってくる。

留学生活ってこういうもんなんだって。

少しは成長できただろうか。

良い夢みます、

Buona notte.