現代の食医 食べて飲んで生きる毎日

長野県で料理人/医者をしています。フィレンツェで料理人してました。

【プロローグ】鋸南の冒険の決め手は"彼"だった(冒険の覚え書)

Buonasera.

 

千葉県鋸南町鋸南エアルポルトで過ごした89日間の大冒険。

夢みたいな速度で夢みたいなことが過ぎ去っていった毎日を思い出そうとするけれど、早すぎて濃すぎた日々は掴み損ねてしまいそうになる。

 

僕は鋸南町で、海を渡り、山を登って、町の人と話し、魚を捌き、強敵を倒すために経験値を貯め、仲間を招いて、みんなで酒を飲んだ。

毎日冒険をして、勇者ではなく”医者であり起業家”を目指した。

鋸南修行編”は、たしかに終わりを迎えたんだ。

冒険の書ならぬ「冒険の覚え書」として、89日間をここに記してみようと思う。

今日は、大冒険のプロローグを覗いてみよう。

 

 

冒険の始まり

89日間起業家プラン」を利用して、2021年の11月終わりから鋸南エアルポルトに住み始めた。

つくりたい未来のために、鋸南に滞在することを決めたのはその2ヶ月前の9月のことだった。

その頃は"東京修行編"の真っ只中だった。

札幌で折に触れてお世話になっている先生に

自分はリアルの場づくりをしたい、(いわゆる)飲食店をしたい

と相談したところ、

 

「それは佐谷さんに会うべきだ」

 

ということで、つないでいただいたのが全ての始まり。

先生は元々、佐谷さんがやっていた世界初のパクチー専門店「パクチーハウス東京」のお客さんだったというわけ。

お互いの都合がついたことはもちろん幸運だったけれど、我ながらかなりの高速で動いた結果、次の週末には鋸南町へ行くことになった。

佐谷さんの本を手に入れて読んでみて冒頭で引き込まれ、ワクワクしてきた。

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内房線をぐるっと東京湾を回ってはじめての南房総へ。

佐谷さんと会い、"縄文アーティスト"まさやん、"キッチンカーアーティスト"ジャマさんとはじめまして。

おお、もう分からない。笑

 

到着してみんなで昼ご飯を食べた後、鋸山を登って反対側の金谷港に降りて再び戻ってくるという「鋸山縦走チャレンジ」に挑むことに。

往復20km超。

山に(走って)登って反対側の港で鐘を鳴らし、帰り道に酒を手に入れ、展望台で乾杯。

もう普通じゃない。笑

乾杯も佐谷さん流、全然普通じゃない。笑

(この乾杯、ハマると抜けられないんだけど、ここではあえて言及しません。知りたい人は鋸南町で飲み会に参加してください♪)

なんてめちゃくちゃな時間なんだろう。

本の内容も十分面白かったんだけど、それ通り、それ以上に、すでになんだか面白い。

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鋸山より

夜はひとり1品料理をつくって出し合ったり(この日の食事から得たインスピレーションはnoteでまとめているのでよければどうぞ)、次の日は朝から佐谷さんと海岸線を歩き、朝からビールを飲んだり。

これから長野で挑戦したいんだという僕の話をいろいろと聞いてもらったし、鋸南町という簡単にまとめると"田舎"である土地でトライする鋸南エアルポルトの話もたくさん聞いた。

刺激だらけでお腹いっぱいになった、あっという間の2日間。

帰り際、

「来週末もイベントあるから、また来てね」

とか誘われて、

(や、東京から電車で2時間半はさすがに遠い。そのペースでは来られぬ)

と心の中で思ったりした別れ際。

この2日間で、十分に刺激をいただいた。満足だ。

「よし、僕も改めてがんばるぞー!」

 

翌週末、2回目の鋸南

なんて吞気に心の中で「がんばるぞ」言ってたら、佐谷さんから連絡がきた。

 

「89日間起業家プランっていう滞在プランもあるから」

 

なんだと、あそこに住めるのか。

冒頭でも述べた通り、僕はリアルの場づくりをしたい、(いわゆる)飲食店をしたい。

その想いを買ってくれた先生がつないでくれた、その分野の先駆者である佐谷さんがやっている、僕の理解が及ばない面白いことにもっと触れていたい。

医師国家試験は2月に控えているけれど、そういえば札幌にいなければならない理由はどこにもない。

調整すれば国家試験直前まで、住めるじゃないの。

でも鋸南町、ほんとに田舎だったし、エアルポルト以外に目立って何もないような土地で、悪く言えば逃げ場がないとも言える。

そんなところでシェアハウスして上手くいかず、89日間後悔して過ごすことになるのはよくない。。。

 

そんなわけで、なんと次の週の週末に再び鋸南を訪れることに。

先週は”佐谷さんに会うため”だったけど、

今回は”エアルポルト鋸南のことをもっと知るため"に。

 

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2回目は、佐谷さんもいつも使っている東京湾フェリー鋸南入り

その週末はエアルポルトの共同オーナーである"縄文アーティスト"まさやんのイベントがあるとのことで。

佐谷さんは東京と鋸南を行き来する生活をしていて、まさやんがエアルポルトに定住している。

つまり、89日間滞在を決めたら89日間まさやんと一緒に過ごすことになる。

まさやんとフィーリングが合うかどうかが今回の訪問での課題になる。

若干の緊張感を覚えながら、懐かしさすら感じるエアルポルトへたどり着いた。

 

エアルポルト滞在の決め手となったのは、まさかの"彼"

といっても、実はほとんど滞在の気持ちは決まっていた。

1回目に来たとき、まさやんの作業スペースの中に1冊の本を見つけていた。

見覚えがあるカバー。

いや、まさかこんなところで見るわけが…。

こんな本、僕しか持ってないのかと思っていたのに(無論そんなわけないけど)。

 

その本の著者は"尾崎豊"。

尾崎豊のことを"往年の名シンガー"として認知している人はたくさんいるけれど、彼が本を、しかも小説を数点残していることを知っている人はほとんどいない。

のはずが、まさか鋸南町尾崎豊の本を手に取ることになるとは。

本がある時点で、まさやんが相当な尾崎豊ギークであること、間違いなし。

合わないワケが、ない。

(他記事でもちょくちょく引用しているとおり、尾崎豊は僕の人生を支えてくれた存在で、2020年に著書にも手を出し始めていました)

 

本を見つけたおかげで1回目の滞在の時点で僕も尾崎豊が好きだという話はしていた。

2回目である今回は、もう少しまさやんと尾崎豊についての話ができればと思ってやってきたのだ。

 

佐谷さん、まさやんとバーベキューを囲みながら、尾崎豊に限らずいろんな話をした。

自然と気持ちは決まっていく。

そして心から決めた。

「89日間滞在します!」

就職活動、卒業のための臨床実技試験、お酒からのオトナの食育に取り組む醸鹿の活動に、10月〜12月でインターンシップの予定。

極めつけに医学生生活の集大成、医師国家試験がやってくる。

 

生きる。

その実体は瞬間にしかない。

 

岡本太郎

 

なんとでもなるさ、やってやる。

ここに滞在することにこそ、価値があるはずだ。

札幌を出て東京に滞在したことで、環境を変えることが重要であることには気づいていた。

医師国家試験のためにきちんと札幌に居座って、医学部同期みんなと一緒に、合格のために自習室で日々勉強をする。

その限りなく合格率を高める生活を、手放すと決めた。

 

「医師国家試験はみんなと同じことをすれば受かる試験」

語り継がれる定説を前に僕が決めた鋸南滞在は、つまり賭けだ。

失敗の確率を高める方法だ。

それでも鋸南町で起きようとしていることを見ていたいと思った。

ここに来て賭けに出る。

「全て手に入れる」そう誓った学生生活、最後に守りに入ることなんてない。

 

89日間の大半は医師国家試験の勉強になってしまうけれど、と伝えたところ了承してもらえた。

覚悟は決まった。

ここで、学生生活最後の冒険を始めよう。

 

これは僕が千葉県鋸南町で挑んだ冒険の覚え書。

ハラハラドキドキする89日間のページをめくってみてください。

 

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まさやんのつくったエッグスタンド土器で、ゆで卵を食らった夜

それではまた次回。

Buona notte.