これは手紙。
私から私たちへ送る。
住む場所を変えてから、そろそろ1ヶ月が経つ。
環境の変化は新たな出会いと、“世界”の崩壊をもたらした。
これまでの私では新しい世界への一歩に耐えられない。
人生を再び歩き出すために、私は私を、正確には3人の私たちを、赦す必要がある。
バラバラになった私たちに、3度声をかけることになる。
いつからか違和感の中で生きてきた。
社会に対して向けていた違和感が、社会性を飲み込むに連れて私に対する違和感へと変わっていった。
社会に順応するように、勉強に励み、スポーツに励んだ。
社会性を飲み込み続けた。
身体のほとんどが社会性に置き換わった時、違和感の矛先をどこに向けるべきか分からなくなった。
時を同じくして「目標」という名の無数のラベルが人生を覆った。
先の見えない人生を、目標を1枚1枚剥がすようにして歩き始めた。
それでも違和感への矛を捨てずに歩いてきた私を讃えたい。
彼こそが1人目の私だった。
この私だったんだ。
これからは君が主役でいていい。
君の将来は明るい。
旅の中で嘔吐し続けた社会性は「医学生」のラベルとして結晶化した。
「優等生」「エリート」「男」「10代」「20代」…。
他にもたくさんのラベルが結晶化していた。
飲み込まないと前に進めなかったんだ。
これを一手に引き受けてくれていた、2人目の私。
ずっと泣いていたんだ。
よくがんばったね。
ありがとう。
そして、久しぶり。
僕だ。
姿は幼稚園の年長〜小学校3年生くらい。
たまに見かけていたんだけど、すぐ隠れてしまうから苦労した。
遠くへ行ってしまいそうなところを見つけられたから、海の向こうへ旅立つことが出来たんだ。
見つけてもらうことを待っていて、見つけてもらうために私を学童保育や小児のいる場所へ動かしていたのかな。
これからは一緒だよ。
大丈夫。
微妙に重なり合った3人が変わるがわる顔を出すから、これまで誰にどの声かけをすればいいか分からなかった。
この手紙が少しだけ私たちそれぞれの顔色の違いを明らかにしてくれた。
3つの心を涙がほどき、つないだ。
私は私を、私たちを赦す。
これからも一緒にやっていこう。