現代の食医 食べて飲んで生きる毎日

長野県で料理人/医者をしています。フィレンツェで料理人してました。

前に進むために、立ち止まらずにはいられない。

Buonasera.

「動いている」を目に見える座標上の変化で捉えことは難しくない。

移動がもつ、私を変える可能性に胸躍ることも少なくない。

新天地へ。

息抜きに旅行へ。

ちょっとそこのコンビニまで。

 

一つの閉じた系を見て、系そのものは移動しないものとして認識される。

味噌樽は、ある座標点から動き出すことはないかもしれない。

一方で直径50cm、高さ40cmの容れ物の中で何が起きているだろうか。

 

2000平方センチメートルの中に広がるゆでてつぶされた大豆と麹と塩の世界。

樽の中に暮らすものにとっては大きな、人にとってはちっぽけな世界。

成分は分解され、時に結びつきながら移動する。

時間をかけて、「動かなかった」大豆と麹と塩は味噌になる。

あの大豆と麹と塩は、いつから味噌になったんだろう。

 

血液、血球成分、間質液、細胞、ニューロン、電気信号。

いのちが生きる限り、立ち止まっていても動き続けることができる。

私が今の私になったのはいつだったろう。

次の私になるのはいつだろう。

 

前に立ち、大きな流れをつくることがこの人生の役目なのだとしたら、大きな流れを人に見えるようにする術を身につけるために、大きな流れを感じられる準備をしなければならない。

いや、せずにはいられない。

蛹にならずにはいられない。

新しい世界に触れる時、そこは座標で語る今までの場所とはすっかり異なってしまうのかもしれない。

パラダイムシフトを起こそう、というのは不正確だ。

シフトする瞬間をすぐそこに感じとっているんだ。

 

僕はここにいて、ここでないところへ移動する。

ここにいながら、新しい私が生まれ、ここでないところへ向けて人生が加速する。

 

MAKERS UNIVERSITY毛受ゼミ夏合宿を終えて、ここにいながら確かな一歩を踏み出す。

Buonagiornata.